精神障害者雇用の現実は?仕事はない?就職は厳しい?給料の手取りに定着率の壁を破る3つの仕事探し

精神障がい者雇用の現実は厳しい?給料の手取りに定着率の壁
かめさん

障がいのある人は、「一般就労」か「障がい者雇用」のどちらを選ぶかで悩むよね

あやこ

わたしは精神障害だけど、障がいが目に見えないため、余計にどちらを選べばいいか迷いがち

筆者は精神障がい者雇用で働く手帳3級保持者です。


私は悩んだ末、障がい者雇用として働くことを選びました。

この記事でわかる5つのこと

  • 障がい者の雇用率はコロナ禍でも上がっている
  • 一般事務やサービス職が多いが、転職サービスを利用すれば色んな職種の募集を見つけられる
  • 給料の低い求人が多い。
  • 自分の「給料の最低ライン」を決めたうえで仕事探しをするべき。
  • 自分で自分の特性を把握して、会社に伝えていくべき。


この記事では精神障がい者雇用で働く当事者としての考えや意見も交えながら、「精神障がい者雇用」について詳しく書いていきます。

重要なお知らせ!

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精神障がい者雇用の現実

精神障がい者雇用の現実
  1. 雇用実態調査の推移
  2. 障がい者雇用で働く人の障害別割合
  3. 精神障がい者(発達障害)の受け入れが進んでいる企業と職種
  4. 取り組み事例

雇用実態調査の推移

令和5年時点で、43.5人以上の従業員がいる日本の一般企業は、法定雇用率が設けられています。

法定雇用率…国や企業が雇用しなければいけない障がい者の割合

2023年の現在その割合は2.3%となっています。

従業員が100人いる企業はそのうち、2~3人の障がい者を雇用する必要がある、ということですね。

コロナ禍にもかかわらず引き上げがされており、国全体で「障がい者雇用を促進しよう」という動きがあることが分かります。

では、実際の雇用実績はどうなっているのでしょうか。

平成30年から令和4年の、民間企業の障がい者雇用実績の推移
平成30年から令和4年の、民間企業の障がい者雇用実績の推移

平成30年から令和4年の、民間企業の障がい者雇用実績の推移は、上記グラフの通り右肩上がりで上がっており、令和4年は実雇用率が2.25%となっています。

19年連続で過去最高を更新中です。

また、法定雇用率を達成した企業は全体の48%にのぼります。

あやこ

障がい者雇用を積極的に行っている企業が増えてきていることがわかるね。

障害者雇用で働く人の障がい別割合

障がい者雇用が積極的に行われていますが、障がい者のなかでも「精神障がい者」はどのくらいの割合で雇用されているのでしょうか?

民間企業における障害の種類別雇用割合
民間企業における障害の種類別雇用割合

平成30年からの民間企業における障がい者雇用の障がい別割合の推移ですが、令和3年時点で最多が身体障がい者、次点で知的障がい者、精神障がい者とつづきます。

>>発達障碍者の就職は難しい?

精神障がい者は平成30年から障がい者雇用義務の対象となったことから、まだまだ雇用実績が少ないのが現状です。

ですが令和2年から令和3年にかけて、雇用実績は11.4%も増加しており、精神障がい者を受け入れる企業は着々と増えていると言えるでしょう。



つづいて、障がい者雇用を進めている企業の規模を見ていきます。

企業規模別の障害者雇用割合
企業規模別の障害者雇用割合

企業規模が大きくなるにつれて、障がい者の雇用率は上がっています。

特に1000人以上の企業は法定雇用率を達成している企業も多いことが分かります。

大企業は「ダイバーシティ推進」への取り組みを行っている企業が多いため、障がい者の受け入れ態勢を整えていると言えるのかもしれません。

精神障がい者(発達障害)の受け入れが進んでいる企業と職種

では、精神障がい者の受け入れが進んでいる企業とは、どんな企業なのでしょうか?

令和3年時点の精神障がい者の雇用実績を産業別にまとめたものです。

  • 最多が製造業
  • 次に卸売業小売業とサービス業がほぼ並んでおり
  • 医療福祉、情報通信業とつづきます

つづいて、職種別の雇用実績を見ていきましょう。

  • 最多がサービスの職業、
  • 事務的職業
  • 販売の職業とつづきます

サービスの職業…介護職員や清掃員の仕事など

事務的職業…会社での庶務や事務員などのサポーターのような仕事

前の項目で「企業規模が大きくなるにつれて、障がい者の雇用率は上がっている」と書きましたが、製造業は大きな工場をいくつも持っているケースが多いので、多くの従業員を雇っていると言えるでしょう。

そのため、障がい者雇用をおこなっているメーカーも多いです。

また、業界に関わらず一般事務の仕事は障がい者雇用の求人もたくさんあります。

データ入力やオフィスでの庶務業務(書類のコピーやスキャン、郵便の発送など)は顧客とのかかわりが少ないこともあり、精神障がい者にとってストレスがかかりにくい環境なのかもしれません。

総合的にみて多い職種はありますが、求人を見ると「Webマーケターのサポート業務」や「プログラマ」などの募集もあります。

雇用を後押し?給料の手取りは妥当か

雇用を後押し、給料手取りは妥当?

雇用を後押しする国の動きがあり、さらに障がい者の定着支援に積極的な取り組みをしている企業が増えているのが事実です。

では、働いていく中で一番の要となるお給料はどのようになっているのでしょうか。

以下の表は、平成30年時点の障がい者雇用の賃金を障がい別でまとめたものです。

日本国民の給与所得平均と障害者雇用の賃金比較
日本国民の給与所得平均と障害者雇用の賃金比較
対象者(障害内容)給料(円)
身体障害約21万5,000
精神障害約12万7,000
発達障害約12万5,000
知的障害約11万7,000

精神障がい者の平均賃金は12万5千円となっています。

手取りで考えると10万円前後です。

身体障がい者と比べるとぐっと下がるのが現状です。

あやこ

都内でのひとり暮らしとなると、かなり厳しいわ……

賃金が少ないのは「正社員雇用が少なく、契約社員が多い」「任せられる業務が一般社員に比べて少ない」という障がい者雇用の特徴があるからでしょう。

取り組み事例

精神障がい者の雇用を行っている企業は、定着のために具体的にどんな取り組みをしているのでしょうか?

いくつか事例を紹介します。

SMBCグリーンサービス 株式会社

三井住友銀行が設立した特例子会社です。

特例子会社…障がい者の雇用の促進、そして安定を図るために設立された会社

取り組み① 精神科医とカウンセラーによる月1回のカウンセリング

精神科医とカウンセラーに業務委託をして、月1回のカウンセリングを実施しています。

上司に直接言えない相談もできる環境を整えることで、精神障がい者がストレスをためにくくなる効果があります。

「前の職場で辛かったことを思い出してしまった」
「上司とうまくコミュニケーションがとれない」

など、会社の人に直接言えないことを言える存在は、支えになるでしょう。

取り組み② 自己紹介シートで当事者の理解を進める

「どんなきっかけで発症したか?」
「どんな症状があるか?」

などを自己紹介シートに書いてもらい、本人の同意を得られた場合はほかの従業員に共有しています。

障がいのことを直接言葉で話すのがためらわれる人も、自己紹介シートを使うことで理解を得やすくなる効果があります。

株式会社 日立製作所

昭和43年創業の電子機器・システムメーカー。

取り組み 当事者同士のミーティングを開催

同じ職場の精神障がい者同士が職場での不安や悩みを打ち明けあうミーティングを月に一度開催しています。

「仲間がいる」という安心感を生み、支えあうことが目的です。

「辞めたい」と漏らした精神障がい者を、別の精神障がい者が叱咤激励して引き留めたという事例もあるそうです。

精神障害者の就職が難しいと感じる理由

精神障害者の就職が難しいと感じる理由

ほかの障がい者雇用と比べて、精神障がい者雇用の給料が低かったり、法定雇用に導入される時期が遅くなったのはなぜでしょうか?

一番の要因として「精神障がい者雇用で雇った人は勤続年数が短い」という実績が出ているからでしょう。

平均勤続年数は以下となります。

障害の種類別勤続年数
障害の種類別勤続年数
障害の種類勤続年数
身体障害者10年2か月
知的障害者7年5か月
精神障害者3年2か月
発達障害者3年4か月

まだまだ長期的な就労ができている事例が少ないことが、企業の精神障がい者の雇用の足かせとなっているケースが多いようです。

精神障害者の仕事はない?障碍者雇用の現状を就労者の視点で語る

精神障害者の仕事はない?障碍者雇用の現状を就労者の視点で語る

ここからは精神障がい者雇用で働く筆者の体験や意見になります。

あやこ

わたしはIT系の企業で庶務をしており、勤続年数は1年です

仕事内容と働きやすさと給料の3つの側面から書いていきます。

仕事内容

本社の庶務として働いています。

精神障害のあるわたしの仕事内容

  • 社内の清掃
  • 郵送物の対応
  • 受付電話対応
  • 簡単なデータ入力
  • 簡単な資料作成

そこまで難しい業務や責任の重い業務は任されません。

あやこ

プレッシャーに押しつぶされることなく、良い意味で気楽に働けているわ

働きやすさ

結論から言うと、とても働きやすいです。

筆者は入社前に「配慮してほしいこと」を全て伝え、同じ職場の人全員に周知してもらいました。

そのため、心無い言葉をかけられたり、厳しすぎる指摘を受けたことも一度もありません。

あやこ

入社したてのときは「腫れ物扱いされている」と感じるくらいに気を遣われて、逆に居心地が悪いくらい(笑)

ですがそれも、業務をこなしていくうちにちょうどいい対応をしてもらえるようになりました。

顧客とのかかわりがほぼないため、社内のメンバーに慣れてしまえばストレスもそこまでありません

給料

結論をいいますが、給料は正直厳しいのが現状です。

筆者は東京近郊でルームシェアをしていますが、生活費をまかなうのに精一杯で贅沢はほとんどできません…。

1人暮らしだったらもっと厳しかったと思います。

ですが、働きやすさや仕事内容を考えると、妥当な金額だと思っています。

給料は厳しいと書きましたが、ほかの面では納得して働くことができています。

仕事がないことはない!精神障害者が働きがいのある仕事を探す3つの方法

仕事がないことはない!精神障害者が働きがいのある仕事を探す3つの方法

では、精神障がい者が働きがいがある、納得した仕事選びをするにはどうすればいいでしょうか。

3つの方法をお伝

「障がい者に特化した転職サービス」を使う

転職エージェントがしてくれること
転職エージェントがしてくれること

筆者はいくつかの障がい者特化型転職サービスを利用していました。

なかでも、専属のエージェントがついてくれるサービスがおすすめです。

「自分の特性」をエージェントを通して会社に伝えることができるからです。

面接に入ると緊張してうまく自分のことが伝えられないことがありますが、エージェントがサポートしてくれるので、私はすごく助かりました。

2~3つの転職エージェントを活用しよう
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「給料の最低ライン」を決めておく

例えば「額面16万円以上」などのラインを決めて会社を探していきましょう。

あやこ

給料は最大のモチベーション

あまりに低いと仕事自体のやる気が下がってしまうので、「自分が生活するのにどのくらい必要か」を考えて最低ラインを決めておきましょう。

「できないこと」「配慮してほしいこと」を明確にして伝える

企業が実施している障害の特性に応じた配慮事例
障害者の配慮事例

これが一番重要だと思います。

例えば、

  • 「大きな声が苦手なので、職場で大声で怒鳴らないでほしい」
  • 「定期的に一人の時間が欲しいため、仕事中に10分くらい外出の時間が欲しい」
あやこ

障がいの特性上「できないこと」や「配慮してほしいこと」は必ずありますよね

かめさん

転職時も入社後も絶対に伝えないと!

入社してからの自分のためにも、会社のためにも役立ちます。

つたえなかったら下記の記事の人のように……

よくある質問と回答

よくある質問と回答
契約社員の障がい者雇用から正社員に登用されることってあるの?

企業によりますが、登用制度のある会社は多いです。
筆者の会社もありますが、一定の勤続と仕事ぶりを上司に認めてもらう必要があります。

時短勤務などの柔軟な働き方はさせてもらえる?

企業によりますが、時短勤務を適用してくれる会社は多いと思います。
時差出勤やフレックスタイム制を導入している企業は認めてもらいやすいと思います。

まとめ

まとめ

精神障害者雇用の現実は改善しており、前向きな企業は増えていますし、雇用率もどんどん上がってきています。

募集は一般事務やサービス職が多いですが、探してみれば色んな職種の募集があります。

全体的にみて給料が低いところがネックなので、自分の中の給料の最低ラインを決めて仕事探しをするのが大事です。

障がい者雇用に限りませんが、自分の特性を把握して会社に伝えていくことが働きやすい職場に出会うコツです。

いかがでしたでしょうか?精神障がい者雇用を考えている方の参考になれば幸いです。

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