障害者雇用にしなきゃよかった…
就職活動で障害を抱える人が初めに悩むのが雇用枠です
悩んだ末に障害者雇用にしてみたものの、ギャップを感じ後悔したことがある人も多いでしょう。
障害者雇用で入社して後悔したら、もう転職するしかないのかと肩を落とすのはちょっと早いです。
たしかに障害者雇用で働いたからといって、必ずしも障害者と企業がしんどい思いをするとは限りません。
中にはお互いに納得のいく働き方を実現しているケースもあります。
どういう場面に出くわしたら障害者は後悔するのか?
どんな対処法があると障害者は嬉しい?
上記を解説しながら、障害者と企業の両者が幸せに働ける方法を紹介します。
障害者雇用で後悔しないための知識を教えます!
障害者雇用で働く私の本音
私は今精神障害を抱えていて障害者雇用で働いているけど、成長している実感も無いし、やっぱり障害者雇用はやめとけばよかった…
障害者雇用は簡単な仕事が多いのは知っていたけど、ここまでひどいとは思ってなかった。
苦手な業務やその他配慮も受けられて長く働けるから、世間からは羨ましいと思われていて、何だかすごいモヤモヤする。
雇用形態 | 入社1年後の離職率 |
---|---|
一般雇用(障がい非開示) | 69.2% |
一般雇用(障がい開示) | 50.1% |
障がい者雇用 | 29.6% |
長く働けるって、はたから見たらすごく羨ましく感じるんだけどね
一般雇用 | 障害者雇用 | |
苦手な業務の配慮 | △ 職場によっては考慮してもらえる | 〇 考慮してもらえる |
通院休暇 | △ 場所によっては取りやすい | 〇 取りやすい |
労働時間の配慮 | ✕ 残業が多い | 〇 残業が少ない |
休憩の配慮 | ✕ トイレ休憩のみ | 〇 1時間につき10分程度の休憩 |
ジョブコーチ | ✕ | 〇 |
作業の難易度 | △ 簡単~難しいまでさまざま | ✕ 簡単な作業が多い |
専門性 | 〇 専門的な仕事が多い | ✕ ルーチンワークが多い |
求人数 | 〇 多い | ✕ 少ない |
給与 | 〇 高い | ✕ 安い |
一般雇用の仕事に転職してキャリアアップしたいけど、またうつ病が悪化するのではないかと考えるとなかなか前に進めないよ…
障害者雇用で別の仕事に転職するにしても、サービスや事務しかないし、選択肢が本当に狭いよ。
職業別にみると、サービスの職業が 30.6%と最も多く、次いで事務的職業(25.0%)、販売の職業
引用:厚生労働省職業安定局 平成30年度障害者雇用実態調査結果
(19.2%)の順に多くなっている。
障害者雇用を実施している企業の本音
法定雇用率を満たすために去年からうちの会社も障害者雇用を始めたけど、正直労力の負担が大きく担当者が困ってるんだよなぁ。
障害者がやらかした仕事のミスもこちらが修正しなければいけないし、かといって指摘の仕方もすごい気を遣うし…
- 体調を壊してまでキャリアアップをしてほしくない
- 法定雇用率のために雇っているので高い給料を払いたくない
- 障害について社員へ啓発するにも労力とお金が掛かる
- 作業マニュアルを用意したり、定期的に面談したりと付随作業が多く大変
ただ、障害者にポテンシャルを感じることは多々あって、できることならやってほしい仕事はある。
どんな仕事をどこまでお願いしていいんだろう?
採用時に適性や能力をしっかりと把握するのは難しいから、仕事をする中でその人ができることを見極める必要がありますね
- 障害者が活き活きと働いてほしい
- 偏りのない多様性のある会社にしたい
- 障害者雇用をきっかけに社員の個性を活かすノウハウを学びたい
あまり多くの給料を渡したり、大きな仕事は任せられないけど、障害者たちに満足して働いてほしいなぁ。
障害者枠で働いて後悔する4つの原因
ここまで障害者と企業の本音を伝えました。
次は障害者枠で働いて後悔する原因を4つ紹介します。
ミスマッチ
入社後のミスマッチは障害者雇用だけでなく一般雇用でもあるあるの話。
なぜなら、求職者は早く働いて稼ぎたいし、企業はできるだけ早く人材を確保したいので、面接の場ではお互いに良く見せようとするからです。
多少の背伸びであれば可愛いものですが、あまりにギャップが大きく、モチベーションに悪影響を出してはいけません。
まじか、やってしまったかも…
仕事にやりがいが感じられない
上述の通り、障害者雇用では単調で簡単な仕事が多いです。
同じ事務職でも、経理や人事など専門事務でない場合は専門ソフトを扱う機会もほとんど無いので、やりがいをあまり感じない人が多いです。
覚えたのはExcelのIF関数だけ、なんてことも
給与水準が低い
待遇の良し悪しは、働き手の気持ちに大きく影響します。
労働条件を入社前に確認しますが、いざ働いてお金をもらうと、贅沢できないことに気づくものです。
お金がカツカツの生活がずっと続くと、もう一度就職活動をやり直したくなりますよね。
厚生労働省職業安定局が行った『平成 30 年度障害者雇用実態調査結果』によると、障害者の給与所得平均は日本国民平均の30万円よりも大幅に下回っていることがわかります。
わかっていたけど、さすがにこの給料は安すぎるわ
がい種別 | 平均月額賃金 |
---|---|
身体障がい | 215,000円 |
知的障がい | 117,000円 |
精神障がい | 125,000円 |
発達障がい | 127,000円 |
他人と比較している
障害者雇用で働いて後悔するのは、他人と比較するからです。
他人といっても多くの場合、それは一般雇用で働いている知人や友人を指しています。
すでに管理職になっていたり、家庭を築いていたり、どうしても自分の現状と比較してしまい悔しくなるでしょう。
自分は何をやっているんだろう…
障害者雇用で両者ハッピーになるために
我々ができる対処法は3つ
原因を知った上で我々ができる対処法を3つお伝えします
- 自分ができることを開示する
- 現状を通過点と考える
- 部署異動を申し出る
自分ができることを開示する
自分ができることは言葉にして相手に伝える必要があります。
会社員であれば、できる仕事とできない仕事を細かく伝えると、人事も仕事を振りやすくなります。
いったいどんなことを企業へ共有したらいいのかな?
- 仕事のモチベーションが上がる要素
- 対外的な仕事はどのくらいできるのか
- 案件をどれくらい担当できるのか
精神障害の人=対人仕事が苦手と、企業が決めつけていることは往々にしてあります。
社外と接する、メンバーとの調整業務を担当するなど、仕事の幅を広げてやりがいを得るために、自分ができることを企業へ積極的に開示しましょう。
できるできないではなく、どのくらいできるかが大切です。
企業と障害者がお互いに歩み寄ることが大切です!
現状を通過点と考える
障害者雇用で働いて後悔している人のたちは、今の状態が死ぬまでずっと続くと思っています。
逆に今過ごしている時間が理想の過点だとしたら、そこまで後悔する必要はあるのでしょうか?
もしあなたが転職してキャリアアップしたいなら、今の会社の仕事は実績作り期間と捉えてもいいでしょう。
フリーランスのような個人事業でやりたいことがある人は、実績作りまでいかなくとも、仕事の基礎力をつけるための準備期間でもよいでしょう。
いずれにしても「今の会社は自己実現のために利用している」くらいに割り切ると、後悔の念も晴れます。
この状況がずっと続くわけじゃないなら頑張れそうね
部署異動を申し出る
入社後はじめに配属された部署でミスマッチを感じた人は、部署異動も視野に入れることをおすすめします。
部署異動をして、就労移行支援事業所時代の知り合いと同じ部署になり、モチベーションが回復した事例もあります。
頻繁な部署異動は難しいですが、お試し感覚で別オフィスで働かせてくれる企業もありますので、一度部署異動を提案するのも選択肢の一つです。
環境が合っていれば、人は最大限に力を発揮できます
企業側の良い取り組み事例3選
障害者雇用が就労後に後悔しないよう、仕事を充実させるための取り組みを積極的に実施している企業もあります。
今回は企業側の良い取り組み事例を3つ紹介します。
改善事例の提案
リーダーに選任した障害者から業務改善提案をしてもらい、働き手のモチベーション向上を図る企業もあります。
平成28年度障害者雇用職場改善好事例の最優秀賞を受賞した企業「シダックスオフィスパートナー株式会社」では、この取り組みをしています。
トレーナー・リーダーに選任され、やりがいに配慮した職務の提供、自ら考えた「改善好事例報告書」
引用:障がい者雇用に積極的に取り組む企業として – シダックス
の提案を通じて本人のモチベーションが向上。同社としてキャリアアップの制度設計も加速。
自分が会社をつくっていく気持ちが感じられますね
自己紹介シートの作成
障害者が任意で自分の障害特性を職場の上司に公開する取り組みです。
障害特性を紙にまとめて開示することで、上司も安心して指示を出せますし、体調を崩したときも落ち着いて対応できます。
内容は、「どういうきっかけで発症したか?」「調子を崩すきっかけは?」「体調が悪くなったときの対処法は?」などです。本人の口からは説明しにくい内容も自己紹介シートに記入することでモレなく伝えることができます。自己紹介シートは職場の上司にオープンにしています。また、本人の希望で知っておいてほしいという人には見せています。
引用:精神障害者雇用事例集「精神障害者とともに働く」SMBCグリーンサービス 株式会社
障害特性を口頭で伝えるのは勇気がいるもんね
社内カウンセラーと職場上司の連携
社内カウンセラーと上司の連携を強化して、障害者の悩みや本音を伝えてくれる企業もあります。
「仕事のことで上司に相談するかどうか悩んでいて」と足踏みしないよう、社内カウンセラーが問題の解決に向けて動いてくれます。
業務に関する悩みを社内カウンセラーが受けた場合、当人の同意を得て、職場の上司へ対応を求めます。仕事がきちんとできたときはほめてもらう。現在の仕事のペースややり方が間違っていなければ、それを伝えてもらう。もしくは、その人の適性に合った仕事に変えたり、納期に余裕のある仕事を割り振るようにしてもらいました。
引用:精神障害者雇用事例集「精神障害者とともに働く」株式会社 かんでんエルハート
カウンセラーが代わりに上司へ伝えてくれると安心するね
よくある質問と回答
- 障害者雇用から一般雇用に契約は変更できないの?
-
障害者が仕事で勤務態度が評価され、同じ会社内で障害者枠から一般雇用へ雇用枠を変更した方もいます。
前例があるかどうか入社前に確認は難しいと思いますが、入社後に意志を伝えてみるとよいかもしれませんね。
- 障害者雇用で給料の高い企業はあるの?
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障害者雇用でも一般雇用と同じくらい高い給料をもらっている人はいます。
ただし、それは管理職であること、専門スキルと実務経験があることが条件です。
筆者の知人では、IT企業の経験者枠で月収40万以上もらっている方もいます。
- 障害者雇用で身につけられる専門スキルにはどんなものがあるの?
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案件は多くはありませんが、プログラミング言語やWebデザインの専門スキルを高める仕事があります。
また、事務職でも経理や人事の経験は専門ソフトも扱いますから、転職する際にも大いに役立つでしょう。
- VBAやRPAなどプログラミング言語
- PhotoshopやillustratorなどWebデザインスキル
- 簿記や会計など経理スキル
- 人事や労務など総務スキル
一方、清掃業や飲食業は他業界への転職で使える専門スキルはほとんど無いのが現状です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
障害者と企業の本音を考えると、一見食い違っていて障害者が楽しく働ける感じがしませんが、両者が幸せになる道は必ずあります。
先駆的な取り組みをしている企業も少しずつですが増えているので、障害者雇用で働いて後悔する人が将来的に減っていくことでしょう。
今も障害者雇用で働いていて、選択を後悔している人がいたらまずは今回お伝えしたことを取り組んでみてください。
一人でも多くの障害者が活き活きと働くことを祈っています。
ご意見をお寄せいただけると幸いです